猫のいる、秋
「にゃーご、こっちへおいで」
喉の奥を鳴らしながら、のそのそとこちらへ向かってくる。
ニャー
小さく鳴いて膝上の毛布に乗ってきた。
眠そうに眼を細めている。
重さと、小さくでも確かに伝わってくる、生き物の動き。
生きているものが体に接しているとこうも落ち着くものか。
パチパチ
暖炉の奥で木が燃えている。
私は、毛布を猫にかぶせ、少しうたたねをした。
パチパチ
初秋の訪れ
家族が出て行ってから、私の日常は静かで、とても感覚に満ちていた。
気を自分の中心に置いて、世界と接しているように
周囲がよくわかるのだ。
人は、分かることで安心する。
それを体感させてくれる日々。
ロッキングチェアに猫と毛布を置いて、立ち上がる。
薄く結露した窓をなぞると、朝日を遠くに溶かした
瑞々しい庭が見えた。
パチパチ、トッ
振り返ると、毛布を引きずりながら、にゃーが寄り添ってきた。