any-story’s blog

今日もどこかで物語が

猫のいる、秋

f:id:yagana:20211028080001p:plain

 

「にゃーご、こっちへおいで」

喉の奥を鳴らしながら、のそのそとこちらへ向かってくる。

 

ニャー

 

小さく鳴いて膝上の毛布に乗ってきた。

眠そうに眼を細めている。

 

重さと、小さくでも確かに伝わってくる、生き物の動き。

生きているものが体に接しているとこうも落ち着くものか。

 

パチパチ

 

暖炉の奥で木が燃えている。

 

私は、毛布を猫にかぶせ、少しうたたねをした。

 

パチパチ

 

初秋の訪れ

家族が出て行ってから、私の日常は静かで、とても感覚に満ちていた。

 

気を自分の中心に置いて、世界と接しているように

 

周囲がよくわかるのだ。

 

人は、分かることで安心する。

 

 

それを体感させてくれる日々。

 

ロッキングチェアに猫と毛布を置いて、立ち上がる。

 

薄く結露した窓をなぞると、朝日を遠くに溶かした

 

瑞々しい庭が見えた。

 

 

パチパチ、トッ

 

振り返ると、毛布を引きずりながら、にゃーが寄り添ってきた。